社会保険と扶養制度~扶養に入るメリットとデメリットをFPが解説

2019.06.18

家計と暮らし

新年度を迎え、勤め先が変わった方もいることと思います。

妻が夫の扶養に入ることになった方もいるでしょう。

またその逆もあるでしょう。

「扶養」には、「社会保険上の扶養」と「所得税法上の扶養」の2つの意味があります。

今回は、「社会保険上の扶養」について、詳しく学んでいきます。

社会保険の扶養になるための条件には、被扶養者の年間収入130万円未満であることや、被扶養者によっては同居していなければならない、といった条件もあります。

「年間130万円未満」という条件は、皆さんがよく知っているものだと思います。

ただ、これらの条件に当てはまらないと、扶養から外れ、自分で社会保険に加入しなければなりません。

社会保険に加入するメリットには、将来の年金額が増えたり、傷病手当金などの様々な給付が受けられたりすることがあります。

一方では、自分で社会保険料を支払わなくてはなりません。

国では、平成28年10月から社会保険の適用を拡大させており、今後も適用範囲の検討がなされることが決まっています。

今後、社会保険へ加入する人が増えるかもしれませんし、扶養となっているあなた自身が、今後自ら社会保険に加入することになるかもしれません。

社会保険の扶養に関する3つのQ&Aもご紹介していますので、合わせてご覧ください。

社会保険の扶養の特徴とは

最初に、社会保険の扶養の特徴について、説明していきます。

社会保険では、一定の条件を満たせば、配偶者(例えば、夫)の扶養になることができます。

扶養になれば、その本人が社会保険料を支払う必要がありません。

そのため、パートをしている妻などは、扶養になるように、その条件に当てはまるように、働いていることが多いのです。

社会保険には何が含まれるのか

そもそも「社会保険」には何が含まれるのでしょうか。

社会保険とは、会社で働くときに加入する保険のことをいい、健康保険や厚生年金保険などが含まれます。

健康保険とは、公的医療保険の1つで、主に病気やケガをしたときに医療費が原則3割になるもの、と認識している方は多いでしょう。

厚生年金保険は、公的年金の1つで、老後への備えをするためのものです。

ただ、社会保険の「扶養」となると、公的年金に関しては、国民年金第3号被保険者となるため、将来の公的年金は、基礎年金のみとなります。

参考サイト⇒厚生労働省「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」

被扶養者の条件

次に、被扶養者になるための条件について、解説していきます。

例えば、「妻が夫の扶養となる」ことは、扶養者が夫で、被扶養者が妻ということです。

被扶養者の条件には、扶養者により主として生計を維持されていることを前提として、(1)収入の条件と、(2)同一世帯の条件の2つをクリアしなければなりません。

(1)収入の条件

「被扶養者(妻)の年間の収入が130万円未満」かつ

→①同居の場合は、その妻の収入が扶養者(夫)の収入の半分未満であること

②別居の場合は、その妻の収入が扶養者(夫)からの仕送りの金額未満であること

(2)同一世帯の条件

・被扶養者となるものが配偶者、直系尊属(親)、子、孫、兄弟姉妹の場合→同居の必要はない

・被扶養者となるものが上記以外の3親等内の親族(叔父、叔母、甥、姪など)の場合→同居の必要がある

以上が被扶養者になるための条件です。

 

参考サイト⇒日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」

年間収入が130万円未満

次に、「年間収入が130万円未満」という条件に焦点を当てて、解説していきます。

そもそも「年間収入」とは、被扶養者となった時点からの将来の年間の見込み収入のことをいい、過去の収入ではありません。

さらに、この年間収入も、被扶養者となるものが60歳以上または障害者である場合には、年間収入180万円未満まで引き上げられます。

この「年間収入130万円(180万円)未満」という条件は気にしている方も多いでしょう。

参考サイト⇒日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」

所得税の扶養とはどう違うのか

次に、所得税の扶養についても、解説していきます。

「扶養」には、今回の社会保険上の扶養の他に、所得税法上の扶養の2つがあります。

所得税の扶養の問題は、「扶養控除」という所得控除に関わってきます。

扶養控除について、詳しく見ていきます。

扶養控除を受けられる人、つまり扶養親族に該当する人は、以下の4つに全て当てはまる人になります。

①配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族など。

→配偶者には、配偶者控除や配偶者特別控除があります。

②納税者と生活を一にしていること。

③年間の合計所得金額が38万円以下であること。

→ただし、給与のみの場合は、給与収入が103万円以下であることが必要です。

④青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者ではないこと。

扶養控除の金額については、以下のとおりです。

一般の控除対象扶養親族(16歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上)のうち、同居しているもの 58万円
老人扶養親族(70歳以上)のうち、同居していないもの 48万円

以上のように、同じ「扶養」といっても全く別のことを言います。

参考サイト⇒国税庁「扶養控除」

扶養から外れた方がいいの?社会保険に加入するメリット・デメリット

次に、社会保険に加入する、つまり扶養から外れることのメリットとデメリットについて、解説していきます。

メリット デメリット
①将来の年金額が増え、安心感が増す。

→今までは扶養ということで第3号被保険者のため、将来は基礎年金のみの受け取りの予定でしたが、第2号被保険者となり、基礎年金に加えて、厚生年金に加入することになるので、将来の年金額が増えることになります。

具体的に金額を挙げると、第3号被保険者の場合は月約65,000円(平成31年4月分から)ですが、第2号被保険者の場合は月平均154,000円となります。

ただし、この第2号被保険者の年金額、つまり厚生年金部分の額は、いつ社会保険に加入したか、そして報酬に比例するものなので、参考程度に覚えておいてください。

②傷病手当金などの様々な給付が受けられる。

→傷病手当金や出産手当金など健康保険の給付も充実してきます。

さらに、厚生年金加入時に障害状態になった場合には、障害厚生年金が受け取れることもあります。

障害基礎年金の場合は、等級が1級と2級のみですが、障害厚生年金の場合は3級までありますので、障害基礎年金よりも受け取れる可能性は広がると言えます。

①社会保険料を支払わなければいけなくなる。

→扶養から外れ、社会保険に加入するとなると、一番ネックになるのが、社会保険料を支払わなければならなくなることでしょう。

社会保険料は会社との折半になるので、すべてを支払う必要はありませんが、大きな負担になるでしょう。

例えば、東京都の平成31年度4月分からの健康保険と厚生年金保険の保険料を見ると、報酬月額が122,000~130,000円だと、自己負担分の社会保険料は月17,766円となります。

ただ、メリットでも述べたように、様々な給付が受けられることを考えると、高くもないのかもしれません。

参考サイト⇒日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」厚生労働省「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」全国健康保険協会「平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

扶養に入るための手続き2ステップ

次に、扶養に入るための手続きについて、解説していきます。

①必要書類を準備する。

必要になる書類は、誰を扶養するかや、仕送りしているか、などによって異なります。

扶養に入る手続きで全員が必要になってくる書類は、「続柄確認のための書類」と「収入条件の確認のための書類」です。

・続柄確認のための書類

→「被保険者の戸籍謄(抄)本(被保険者との続柄が分かるもの)」

「被保険者の住民票(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合に必要)」

・収入条件の確認のための書類

「退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し」や「雇用保険受給資格者証の写し」など。

障害年金や遺族年金などの非課税となる収入がある場合は、「受取金額のわかる通知書等のコピー」も必要になります。

これらに、「健康保険被扶養者(異動)届」に必要事項を記入します。

②用意できた書類を扶養先となる会社の担当者に提出する。

会社側で書類が揃ったら、日本年金機構に提出することになります。

参考サイト⇒日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」

社会保険の扶養で間違いやすい注意ポイント2つ

次に、社会保険の扶養で間違いやすい注意ポイントを2つご紹介します。

①被扶養者の年間収入には失業給付や、障害年金や遺族年金も含めた公的年金、傷病手当金なども含んで計算しなければならない。

→通常、失業給付や障害年金などは、自分の収入としてとらえない人が多いと思います。

ですが、扶養になる手続きでは、そういった国からの給付金等も含めて、年間130万円(もしくは180万円)未満が条件となっているのです。

②内縁関係にある人も扶養になれる。

→実は内縁関係にある人も扶養になれます。

ただし、同居していることが条件で、「内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本」や「被保険者の世帯全員の住民票」などの書類が必要になってきます。

詳しくは公的機関に相談してみましょう。

参考サイト⇒日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」

最新の税制改正ポイントをおさえて正しく理解しよう

次に、平成28年10月から変更になった社会保険の適用範囲が拡大されたことについて、解説していきます。

平成28年10月から、従業員が501人以上の会社で週20時間以上働く人も社会保険への加入対象となりました。

さらに、平成29年4月からは、従業員が501人を超えていなくても、労使で合意すれば社会保険への加入対象となりました。

その他にも、「1か月の賃金が88,000円以上であること」であったり、「雇用期間の見込みが1年以上あること」、「学生でないこと」が要件となっています。

社会保険に加入することは、前述したように、将来の年金額が増えたりするなど、メリットも多いです。

ここで注意したいのは、年収が130万円未満でも、上記の要件に当てはまれば、被扶養者になれません。

なお、平成31年9月まで、社会保険の対象の範囲についての検討を進めることになっています。

今後も適用範囲が変更される可能性もあるので、最新のニュースを確認するようにしましょう。

参考サイト⇒厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」

こんな場合はどうする?社会保険の扶養に関するQ&A

最後に、社会保険の扶養に関する3つのQ&Aを解説します。

子供はパパとママどちらの扶養に入ったらいいか

1つ目の疑問は、「子供はパパとママどちらの扶養に入ったらいいか」です。

共働き世帯も増えているため、このようなお悩みを持っている方は多いでしょう。

原則としては、子供は、生活費を負担し養っている方の扶養になります。

ただ、パパとママの収入が同じくらいの場合は、それぞれの健康保険組合や協会けんぽの子供に対する補助制度や家族手当などを確認してみましょう。

例えば、インフルエンザの予防接種を受けられるか、どのくらいの金額を限度に補助してくれるか、などを見ると良いでしょう。

こういった補助や家族手当などについては、会社の給与・賞与の決まり方や福利厚生などについてまとめてある冊子等に記載されていますので、もう一度内容を確認してみましょう。

定年退職して年金受給者となった親は扶養できるのか

2つ目の疑問は、「定年退職して年金受給者となった親を扶養に入れられるのか」です。

会社員の親が定年退職を迎えると、(1)加入していた会社の健康保険を任意継続するか、(2)国民健康保険に加入するか、(3)家族(子供など)が加入している会社の健康保険の扶養に入るか、の3つから選ぶことができます。

(3)の家族の健康保険の扶養にする場合、もちろん年金受給者であっても、前述した収入の条件と同一世帯の条件に当てはまれば、扶養にすることはできます。

収入だと、親が60歳以上でしたら年間収入が180万円未満であれば、収入の件はクリアになりますし、同一世帯の条件については、親は同居でも別居でも問題ありません。

ただし、これは親が75歳になるまでです。

協会けんぽでは、後期高齢者医療制度の被保険者となる人は被扶養者にはなれない、としています。

後期高齢者医療制度とは、簡単に言うと、75歳からの医療費の自己負担が原則1割になるというものです。

例外として、現役並み所得者は3割負担となります。

保険料の全国平均は、月々約5,670円となっており、ほとんどの場合において年金から天引きされます。

結論を言うと、「定年退職して年金受給者となった親を扶養に入れることはできるけれど、75歳になるまでである」ということになります。

参考サイト⇒日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」

扶養に入ったままで個人事業主として開業できるか

3つ目の疑問は、「扶養に入ったままで個人事業主として開業できるか」です。

妻が個人事業主となったけど、引き続き夫の扶養に入っていられるのか、と考えている人もいるでしょう。

結論は、「扶養に入ったままで個人事業主として開業できる」です。

もちろんこれは、前述した130万円未満の収入の条件などをクリアした場合です。

ただし、配偶者の入っている健康保険によって、その条件は異なるので、確認すると良いでしょう。

まとめ

以上、社会保険の扶養についてでした。

社会保険の扶養になる条件を改めて知り、もし扶養から外れて自ら社会保険に加入しなければならなくなったときに、どんなメリットやデメリットがあるのか、お分かりいただけたかと思います。

今後の政府の社会保険の適用拡大にも注目しながら、これを機会に、扶養に入ることと、自ら社会保険に加入することの両方について、考えていきましょう。

以上となります。

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