介護保険とリハビリ~機関や料金と通所リハビリや訪問リハビリの併用方法

2019.05.01

介護保険

高齢者が自立して暮らすためにリハビリは重要なものです。

リハビリには医療保険で行うものと介護保険で行うものがあり、介護保険で行うものには自宅で行うものと施設に通うものとがあります。

これらの目的の違い、併用の可否、料金などについて把握しましょう。

介護保険のリハビリと医療保険のリハビリの違い

リハビリテーションには医療保険で行われるものと、介護保険で行われるものとがあります。

医療保険で行われるリハビリは、疾患の治療を機に医療上の必要がある人に対して行われます。

行われる場所も医療機関です。

疾患を発症して診断と治療を行う時期を急性期といいますが、この時点でリハビリが開始されることもあります。

後々までずっと床に就くようなことがないよう、早期離床や廃用症候群の予防が目的です。

病状が安定して回復期に入り、医学的に見て心身機能やADL(日常生活動作)に改善が見込める間は、医療保険から心身の機能回復のためのリハビリが行われます。

医療保険でのリハビリは、疾患の発症からの回復までを範囲とするため、疾患別に一人ひとり個別に行うのが基本です。

また、疾患ごとに医療保険でのリハビリを受けられる日数に制限があります。

介護保険でのリハビリも医師の指示のもとに行いますが、治療とは別です。

疾患が原因でも、これ以上治療を続けて状態が改善することは期待できないと医学的に判断された後は、医療保険ではなく介護保険でリハビリを行うことになります。

実施する機関は、医療機関に併設されたものも含め、介護保険の事業所です。

後で述べますが、この維持期と呼ばれる時期のリハビリについては、医療保険から介護保険への移行がやや複雑なものとなっています。

介護保険でのリハビリは、心身機能やADLだけでなく、日常・社会生活での活動やQOL(生活の質)などを視野に入れて行われるものです。

介護保険でのリハビリは集団で行われることも多く、また、期間に制限はありません。

訪問リハビリと通所リハビリの違い

介護保険で受けられるリハビリテーションには、訪問リハビリと通所リハビリがあります。

文字通り、訪問リハビリは自宅まで専門家に来てもらって行うものです。

通所リハビリはリハビリ施設に通うもので、デイケアと呼ばれることもあります。

制度の上では、訪問リハビリは「通院が困難な利用者」に対して行われることとされています。

ただ、この規定の趣旨は、訪問リハビリと通所リハビリとで同等なサービスが受けられるなら通所リハビリを優先すべき、というものです。

ケアマネジメントの結果、訪問リハビリの必要性が認められれば、必ずしも通所リハビリ優先とは限らず訪問リハビリを行うことは可能で、弾力的に運用されています。

有用であれば併用も可能です。

訪問リハビリの特徴と内容

病院・診療所、介護老人保健施設から、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問して行います。

訪問リハビリの内容は、それぞれの専門スタッフからリハビリを受けることで、心身の機能の維持や回復、日常生活の自立を助けるものです。

家族に対しても、リハビリについてアドバイスをしたり相談にのったりします。

利用者のニーズや介護度によってリハビリの課題は異なります。

歩いての移動や、寝返りや起き上がりなどの姿勢を変える動作などができるよう必要な訓練を行うことが多いようです。

介護度によっては入浴や着替え、トイレの動作も課題となります。

訪問リハビリのメリットとデメリット

訪問リハビリのメリットは、利用者が実際に生活を送る環境に合わせて訓練できることです。

いくら施設の階段の昇り降りができても自宅の階段で立ち往生するようでは困ります。

また、リハビリの専門家が自宅の様子を直に目にすることで、利用者や家族への生活の工夫やリフォームなどのアドバイスも、より具体的になるでしょう。

もう一つのメリットは、利用者本人がリラックスできることです。

施設まで通って慣れない環境で取り組むのが困難でも、訪問リハビリなら取り組めることもあるでしょう。

こういったメリットも勘案してケアマネジメントで必要と判断されれば、通所リハビリよりも訪問リハビリを優先させることもあります。

デメリットは、施設にあるような環境が訪問先の一般住宅では整えられない点です。

リハビリに大掛かりな設備が必要でも、訪問リハビリではそれが使えません。

それに、施設であれば医師や看護師の目が行き届くこともありますが、訪問リハビリでは理学療養士などが自宅に来るだけなので、医学的な見地からの目配りが十分とならない点もデメリットです。

また、レクリエーションなども社会参加に向けたリハビリの一環ですが、これも訪問リハビリでは不十分になりがちです。

施設への通所リハビリでは利用者が外に出ることで刺激が得られたり、家族が息抜きできたりしますが、訪問リハビリではこういったメリットを享受できないことになります。

訪問リハビリの費用と自己負担額

介護保険全般に言えますが、保険の給付は正確には単位で決まります。

通常は1単位が10円ですが、地価や人件費が高い地域では10円より高くなる場合もあるものです。

訪問リハビリでは1回あたり290単位が基本となります。

1単位10円なら2900円が基本報酬となります。

介護保険の利用者は基本報酬の原則1割を負担します。

したがって、原則通りなら2900円の1割、つまり290円を1回あたりの利用料として支払います。

これを自己負担額といいますが、所得によっては介護保険の自己負担割合が1割ではなく2割や3割というケースもあります。

通所リハビリの特徴と内容

利用者が、介護老人保健施設、病院・診療所に併設された施設などに通って、リハビリを受けるものです。

デイケアともいい、介護目的のデイサービスとは混同されがちですが、リハビリ目的である点が異なります。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の専門家がスタッフとして訓練にあたるほか、大型の器具も使えます。

医療保険でのリハビリと異なり集団で行うことが多いですが、利用者の状態によっては個別で行うこともあります。

訪問リハビリと同様に、歩行や姿勢を変える動作などの訓練を行うことが多く、また、施設の設備を用いての入浴やトイレの動作も訓練の対象となります。

通所リハビリでは、集団でのレクリエーションなどを通じてコミュニケーション機能の維持・向上を図り、社会活動へとつなげていくことも内容の一つです。

通所リハビリのメリットとデメリット

通所リハビリのメリットとして、専門家の指導とともに、施設にある大型の器具や設備を使ってリハビリを行える点があります。

医師や看護師などに医学的な視点から状態をチェックしてもらいやすいのもメリットです。

また、外出することで利用者にとって刺激となり、家族にとっては負担の軽減となります。

集団でのレクリエーションなどで社会活動も行いやすくなります。

デメリットは、自宅とは異なる環境で行うので、施設ではできたことでも自宅ではできないということが起こりうることです。

これではリハビリの意義が薄れてしまいます。

また、通所リハビリでも個別の対応をすることもありますが、一人の担当者が複数の利用者を集めて集団で行うことが多いものです。

そのメリットもありますが、個別の場合に比べてきめ細やかさを欠き、利用者によっては訪問リハビリで対応した方が良いケースもあります。

外出や集団活動が負担となる利用者も、訪問リハビリの方が適切でしょう。

通所リハビリでは集団で活動することが多く、実施内容も施設で決まっています。

また、器具・設備も施設によって異なるものです。

利用者本人に向いているかどうか事前に確認が必要となります。

通所リハビリの費用と自己負担額

通所リハビリの費用は、施設の規模や利用時間で異なります。

通常規模の事業所で6時間以上7時間未満のリハビリを行った際の1回あたりの料金は下の表のようになります(通常規模とは1ケ月の平均利用延べ人数750人以内です)。

1単位10円、自己負担割合1割の場合の自己負担額です。

要介護1 667円
要介護2 797円
要介護3 924円
要介護4 1,076円
要介護5 1,225円

 

要支援の人にも類似のサービスがあります。

正確な名称は介護予防通所リハビリテーションです。

こちらは、日常生活全般を対象とする共通的サービスに加え、利用者の心身の必要に応じて「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」を選択して組み合わせます。

1月あたりの自己負担額は以下のとおりです。

共通的サービス 要支援1 1,712円
要支援2 3,615円
選択的サービス 運動器機能向上 225円
栄養改善 150円
口腔機能向上 150円

リハビリにおいて介護保険と医療保険どっちが優先される?

先にも述べたように、疾患の発症間もない急性期と、医学的に改善する見込みがある回復期には医療保険でのリハビリが行われ、それ以降の維持期には介護保険からのリハビリテーションが行われます。

介護保険全般に言えることですが、介護保険で医療系サービスが受けられる場合は介護保険が優先されることになっています。

介護保険でのリハビリに移行したら、特殊なケースを除き、介護保険が優先されるのが原則です。

介護保険と医療保険が併用できない理由

介護保険は2000年から始まった比較的新しい制度です。

心身の不調を発症してからずっと医療サービスを受けていた人も、介護保険制度発足後は、日常生活を自立して営むことを目的とする介護サービスの方が適切なら介護サービスを受けることとなりました。

もし医療保険と介護保険とで類似の医療系サービスがあるなら、介護保険が優先されるのが原則です。

国の財政における医療費増大を防がなくてはならないという社会的要請も背景にあり、厳しく運用されています。

法的根拠は健康保険法などです。

健康保険法には「医療保険から医療サービスを受けられるものでも、介護保険からも給付を受けられる場合には医療保険からの給付は行わない」と定められています。

健康保険法法55条2項

特にリハビリについては、維持期に入ったら、社会活動・参加を目的とした介護保険のリハビリに移行することが望ましいとされています。

医学的なリハビリで回復を図るにも限界があり、それを超えても漫然と医療機関での医療リハビリを続けてしまうと、利用者の社会活動・参加、ひいては社会復帰へ踏み出すきっかけを失ってしまう可能性があると懸念されているのです。

とはいえ、維持期のリハビリを医療保険ではなく介護保険から行うという原則の実現には、複雑な経緯があります。

既に医療機関で医療リハビリを受けている人にとっては、医療サービスから離れることで医学的な必要性やリスクに対応してもらえないという不安があったり、介護保険でのリハビリの質が分からないという心配があったり、心理的抵抗感も大きいからです。

そのため、介護保険優先で医療保険との併用はできないことを原則としつつも、一定の条件で併用できるものとする経過措置が繰り返し延長されてきました。

2019年現在でも、医療保険でのリハビリを受けてきた機関とは別の施設に移って介護保険を利用する場合には、一定の期間、医療保険と介護保険の併用が認められています。

一定期間とは介護保険のリハビリの利用開始日を含む翌々月までです。

ただし、医療保険で行うリハビリの回数・時間は制限されます(1月7単位まで。単位については後述)。

一方で、介護保険でのリハビリの提供体制も整い、医療機関と介護施設とで連携するしくみも整備されつつあります。

今後、制度の本来の趣旨にのっとり、医療保険と介護保険の併用はできないという扱いに一本化されていくでしょう。

介護保険で行うリハビリの内容や目的と対象者

介護保険でのリハビリでも、医療保険でのリハビリに引き続き心身機能やADLの改善や向上も目指します。

ただ、これらだけでなく、自立した生活を営むことやQOL(生活の質)を向上させることが主要な目的です。

個別の疾患への対処ではなく、日常生活や社会生活の充実が課題となるのです。

このような介護保険でのリハビリの目的を達成するために、各専門職種がチームを組んでリハビリにあたります。

理学療法士は運動療法を指導したり、マッサ-ジなどで痛みを取ったり筋肉の張りをほぐしたりします。

そうして、歩行、寝返りや起き上がりといった動作をしやすくします。

作業療法士は、手芸や工作、レクリエーションなどを通じ、手先を使う動作の機能を維持し高めることが役割です。

言語聴覚士は、食事にも必要となる口まわりの機能や言語を用いる能力、身振りや表情も含めたコミュニケーション能力の維持や改善を図ります。

訪問リハビリも通所リハビリも要介護1~5の人が対象です。要支援の人も、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーションで同じようなサービスを受けられます。

介護保険を使ったリハビリシミュレーション

要介護3の認定を受けた人が、週2回(月8回)、通常規模の事業所で6時間以上7時間未満のリハビリを行った場合を考えます。

1単位10円で自己負担割合1割の場合、1回あたりの自己負担額は924円ですから、週2回で924円×2回=1,848円、月8回で924円×8回=7,392円を負担することになります。

介護保険では、医療保険のリハビリと違って期間に制限はありません。

ただ、介護保険からの給付金額には支給限度基準額というものがあります。

したがって、費用の面では制約を受けるかもしれません。

訪問介護や訪問看護など他の介護サービスを含め、たとえば要介護3の人は、介護保険からの支給は1月あたり26,931単位までです。

ケアプランでは、その中に通所リハビリ1回924単位を組み入れることになります。

医療保険で行うリハビリの内容や目的と対象者

医療保険では疾患に応じて医学的に必要なリハビリを行います。

疾患別リハビリテーションと呼ばれ、心大血管疾患、脳血管疾患等、運動器、呼吸器、廃用症候群などに分かれています。

それぞれ20分が1単位で、1単位ごとの点数が決まっています。

内容は疾患ごとに異なります。

医療保険でのリハビリの目的は、心身機能やADLの向上や改善です。

発症後、早急に取り組まないと機能が失われたり、ずっと寝たきりになったりする恐れがある場合には急性期からリハビリに取り組みます。

入院や外来での治療と並行して行われる回復期のリハビリテーションでは、利用者に個別のリハビリを集中的に実施することで機能回復やADL向上を目指すことが目的です。

対象者は、その疾患にかかった患者で、医学的な必要がある人です。

年齢が若い人や、高齢でもまだ要介護認定を受けていない人も対象となります。

要介護認定を受けた高齢者でも急性期、回復期にあり、医学的な必要があれば医療保険の対象です。

医療保険を使ったリハビリシミュレーション

例えば、脳血管疾患では、急性期でも、麻痺した手を理学療法士などが動かすことで機能の回復や改善が見込めるので早くからのリハビリが必要です。

ベッドから起き上がれなくても、ベッドの上で手足を動かしたり寝がえりをうったりといった動作を行って筋力をつける訓練もあります。

病状が安定し回復期に入って行われるリハビリは、ベッドから起き上がること、車いすを利用できるようになること、歩行できるようになることを目標とした訓練などです。

必要に応じて、箸を持つなど手先の動きを作業療法士が、言葉を取り戻すのに言語聴覚士が必要なリハビリを行うこともあるでしょう。

医療保険における疾患別のリハビリは、それぞれ20分が1単位で、1単位ごとの点数が決まっています。

一定規模の病院であれば脳血管疾患245点です。通常の医療では1点10円ですので、2,450円となります。

脳血管疾患等リハビリでは発症から180日まで1日6単位が認められます(医師の判断で9単位まで可能なこともあります)。

早期にリハビリに取り組んだ場合、早期リハビリテーション加算が1単位につき30点加わることもあり、その期間は30日が限度です。

医療保険においても、費用の全額を払うのではなく一部負担金を払います。

医療保険の一部負担金の割合は70歳まで3割、70歳以上75歳未満で2割、75歳以上で1割が原則です(現役並み所得者では割合が高くなります)。

疾患別リハビリは、医療上の必要に応じて個人差が大きいものです。

仮に、1日6単位を180日間受けたとすると、2,450円×6単位×180日=2,646,000円となります。

利用者が70歳以上75歳未満で一部負担金割合が2割だとすると、リハビリについて支払う金額は529,200円です。

ただ、この金額は早期加算や9単位実施した場合を含んでいませんし、リハビリ以外の薬代や入院費なども含んでいません。

そのため実際の負担額は高くなる可能性もあります。

しかし、医療保険には高額療養費制度もありますので、ある程度費用を抑えることが可能です。

また、180日ずっと医療保険でリハビリを受けるとは限らず、より短い期間で済めばより少ない負担額となるでしょう。

医療保険か介護保険かは利用者が選ぼうと思って選べるものではありませんし、趣旨も異なるものです。

どちらの制度のものであれ自分に必要なリハビリを受け、費用の負担については、主治医やソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどに相談しながら取り組んでいきましょう。

まとめ

高齢になって心身に不調を生じた後も、日常生活や社会活動を自立して行うためには、リハビリはかかせません。

リハビリには疾患の発症をきっかけに医療機関おいて医療保険で行われるリハビリと、介護保険で行われるリハビリとがあります。

介護保険で行われるのは、訪問リハビリと通所リハビリの2つです。

訪問リハビリでは専門スタッフが利用者の自宅を訪問して行い、通所リハビリでは利用者が専門施設に通うという点が異なります。

どのリハビリにも、それぞれの役割や、メリット・デメリットがあります。

医療保険のリハビリと介護保険のリハビリの併用は問題となりがちです。

特例を除き、原則は併用禁止なので注意しましょう。

介護保険については通所リハビリ優先ではありますが、利用者のニーズに合わせて弾力的に運用されています。

ケアマネジャーなどと相談して最適な手段を選びましょう。

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